アトピー性皮膚炎は、慢性的な皮膚の炎症性疾患です。乾燥した皮膚にかさぶたや病変が現れ、症状は周期的に悪化(再発)します。アトピー性皮膚炎の場合、どのような洗浄方法が適切か、肌を刺激せずに清潔を保つ方法について解説します。

アトピー性皮膚炎の場合、どのように洗えばいい?
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎 は、慢性的な皮膚の炎症疾患です。 感染性はなく、赤い発疹が再発を繰り返す形で現れ、かゆみを伴います。こうした症状は持続時間が異なり、皮膚を非常に乾燥させるため、「乾皮症」とも呼ばれます。また掻くことで、皮膚が肥厚(厚く硬くなる)する「苔癬化(たいせんか)」が起こります。
アトピー性皮膚炎の子どもの50〜70%が、親や兄弟などの近親者にも同じ湿疹疾患の既往歴があることが分かっています。アトピーの人々は、環境中のアレルゲンに反応してIgE(免疫グロブリンE)抗体を大量に分泌します。また、皮膚の角質層の正常な機能に必要なフィラグリン遺伝子やその他の分子に異常が見られることも多くあります。
この「アトピー体質」は、皮脂・脂質・細胞間接着分子の不足による皮膚バリア機能の低下によって引き起こされます。その結果、外部アレルゲンが皮膚内へ簡単に侵入し、免疫細胞を刺激して過剰な炎症反応を引き起こすのです。
アトピー性皮膚炎のときの正しい洗い方
先述のとおり、アトピー性皮膚炎の人はアレルゲンに対して大量のIgE抗体を分泌する体質を持っています。皮膚は乾燥しやすく、皮膚バリアが低下しているため、アレルゲンが表皮に容入り込みやすく、免疫防御細胞と反応してしまいます。こうした皮膚反応の悪化を防ぐには、日ごろから適切な衛生習慣を心がけることが大切です。
石けん成分を含まない低刺激性の保湿洗浄料を使用する
かゆみを防ぐためには、香料やアレルゲンを含まない低刺激性のマイルドなボディソープおよび洗浄料を選びましょう。アトピー肌や敏感肌向けに作られた、高い保湿力を持つボディウォッシュも販売されています。不安な場合は皮膚科医に相談し、適切な製品を提案してもらいましょう。
シャワーの時間を短くする
水は皮膚の乾燥を助長します。肌が乾燥しやすく敏感なアトピー肌にとって、長時間のシャワーは肌のバリアをさらに弱めてしまいます。肌をさらに傷つけないために、シャワーの時間を可能な限り短くするよう心がけましょう。
入浴を避ける
アトピー肌の場合、長時間の入浴よりも短時間のシャワーが推奨されます。お湯との長時間接触は皮膚の水分を奪い、乾燥を悪化させるためです。
お湯の温度を上げすぎない
シャワーはぬるめの温度(約36〜38℃)が理想です。熱すぎるお湯は皮膚のうるおいを保つ皮脂膜を壊し、バリア機能をさらに低下させてしまいます。
やさしく水分をふき取る
摩擦は敏感な肌を刺激し、かゆみや炎症を引き起こす原因になります。タオルで肌を拭くときはこすらず、やさしくポンポンと軽く押さえるように水分を取るのがポイントです。また タオル は柔らかくて肌触りのよいものを選びましょう。
シャワー後すぐに保湿クリームを塗る
シャワー後の保湿ケアは重要です。保湿クリーム を塗ることで、皮膚の脂質を補い、水分の蒸発やアレルゲンの侵入を防ぐだけでなく、炎症反応を抑制できます。このような保湿剤は、肌に栄養を与え柔らかくし、乾燥による不快感を和らげるために開発された製品のため、シャワーによる乾燥を緩和するのにも役立ちます。
参照
GOLDENBERG G. & al. Eczema. The Mount Sinai Journal of Medicine (2011).
YEUNG J. & al. Diagnosis and treatment of pruritus. The College of Family Physicians of Canada (2017).
肌タイプ診断
自分の肌タイプと
お肌に合ったケアを調べましょう。