唇のひび割れ(口唇炎)は、皮膚の水分不足やバランスの乱れを反映した症状です。その原因はさまざまで、ひび割れの種類とその背景にある要因を理解することで、適切な治療を選ぶのに役立ちます。ここでは、主な種類のひび割れについて説明します。

唇のひび割れ(口唇炎)は、皮膚の水分不足やバランスの乱れを反映した症状です。その原因はさまざまで、ひび割れの種類とその背景にある要因を理解することで、適切な治療を選ぶのに役立ちます。ここでは、主な種類のひび割れについて説明します。
冬に唇が乾燥しやすいのは、冷たい風や乾燥した空気が皮膚に与える影響によるものです。唇には皮脂膜(ハイドロリピッドフィルム)がほとんどないため、外部刺激に弱く、乾燥やひび割れが起こりやすくなります。
特徴
極度の乾燥、ひび割れ、皮むけ
下唇に深い亀裂が生じることもある
唇を舐める癖が症状を悪化させる
予防策
定期的に保湿リップクリームを使用する
環境ではなく物理的な要因によって生じるひび割れです。例えば、次のような要因が挙げられます。
合わない入れ歯や歯並びの異常による摩擦
楽器の演奏やおしゃぶりの使用
唇を噛む・舐める癖
特徴
主に下唇に鱗屑(うろこ状の剥がれ)が現れる
口の内側の頬にも影響を及ぼすことがある
予防策
原因となる習慣を改善する
唇の保護ケアを徹底する
唇はメラニンが少なく、紫外線の影響を受けやすい部位です。紫外線によるダメージが蓄積すると、次のような症状が現れます。
赤み、腫れ、痛み
水ぶくれやかさぶたの形成
リスク要因
長時間の紫外線曝露
屋外での長時間の労働
注意点
紫外線による口唇炎は 前がん性病変 となる可能性がある
必要に応じて医師による生検を受ける
予防策
唇にも日焼け止めを塗る
タバコの熱や有害物質が原因で、下唇に 白い角化性の斑点(白板症) が現れることがあります。
特徴
唇に白い膜のようなものができる
一部は厚く、でこぼこした形状を持つ
注意点
癌化の可能性があるため、生検が必要になることもある
対策
禁煙をすることで改善する可能性が高い
特定の物質に対する 遅延型アレルギー反応 によって起こるひび割れです。考えられる要因は以下です。
口紅やリップクリーム(リモネン、リナロールなどの成分)
歯磨き粉、洗口液
香料入りのガムやキャンディ
ニッケルを含む歯科用器具
特徴
唇の腫れ、ひび割れ、皮むけ
かゆみや水ぶくれを伴うこともある
対策
アレルゲン特定テスト(パッチテスト) を行い、原因物質を避ける
① 細菌性口唇炎
主に小児に多い
溶連菌や黄色ブドウ球菌 による感染
膿を含む水ぶくれが発生し、かさぶたになる
口周り、鼻周りにも広がることがある
治療
局所消毒+抗生物質(外用または経口)
② ウイルス性口唇炎
単純ヘルペスウイルス(HSV-1, HSV-2)が主な原因
水ぶくれが群発し、かさぶたを形成
10日ほどで自然治癒するが、再発しやすい
治療
軽症なら保湿のみ
重症の場合は抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)
③ 真菌性口唇炎
カンジダ菌(Candida albicans)が主な原因
口角に発生することが多い
抗真菌クリームの塗布で改善
刺激性物質(洗剤など)が唇に触れることで起こる炎症。
特徴:
赤み、腫れ、痛み
数時間後に水ぶくれが発生
かさぶたが形成される
対策:
直ちに水で洗い流す
保湿ケアを徹底
症状がひどい場合は医療機関を受診
比較的まれな疾患で、重度のひび割れと 厚い茶色のかさぶた が特徴的。
特徴:
女性に多い
精神的ストレスとの関連が指摘されている
皮膚が剥がれ落ちるような見た目
治療:
保湿剤の頻繁な塗布
医師によるかさぶたの除去
場合によっては心理療法も必要
特定の薬剤による 副作用 で発生するひび割れ。
原因:
レチノイド(イソトレチノインなど)(ニキビ治療薬)
インジナビル(HIV治療薬)
特徴:
乾燥、ひび割れ、赤み、皮むけ
対策:
予防として 高保湿のリップケアを併用
唇のひび割れには多くの種類があり、それぞれに特有の原因や症状があります。以下は簡単にまとめた表です。
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