ニキビと酒さは、共通点により類似性が指摘されるものの、いくつかの明確な差異によって区別される皮膚疾患です。治療面では、ニキビ治療に用いるいくつかの薬剤が酒さの治療にも適応される場合があると言われています。以下で、ニキビ治療薬を酒さに用いることが本当に可能かどうかを検証します。

ニキビと酒さは、共通点により類似性が指摘されるものの、いくつかの明確な差異によって区別される皮膚疾患です。治療面では、ニキビ治療に用いるいくつかの薬剤が酒さの治療にも適応される場合があると言われています。以下で、ニキビ治療薬を酒さに用いることが本当に可能かどうかを検証します。
ニキビ と 酒さ、特に丘疹膿疱型は、見た目が似ていることのある皮膚疾患です。どちらも炎症を伴う丘疹や膿疱として現れ、痛みや赤みを伴うことがあります。しかし、発症の仕組みには違いがあります。
ニキビは、顔だけでなく背中や胸にも見られ、皮脂の過剰分泌や角質が厚くなることで毛穴が詰まることが主な原因です。さらに、Cutibacterium acnes(クチバクテリウム・アクネス)という細菌も関与しています。
一方、酒さは一般的に免疫機能の異常や、デモデックス(顔ダニ)の過剰な増殖が関与し、顔の血管が過度に拡張することで生じるとされています。酒さはまた 眼の症状 やホットフラッシュを伴うことがあり、これはニキビには認められない特徴です。
ニキビ治療に用いられる一部の薬剤は、酒さの治療にも処方されることがあります。
アゼライン酸は、ニキビ治療に広く用いられる二価カルボン酸で、通常は10~15%濃度のクリームやジェルとして処方されます。近年では、酒さに対する有用性についても研究が進んでおり、酒さの患者を対象とした複数の臨床試験において、15%アゼライン酸ゲルを外用することで、赤みや炎症を伴う皮疹の数が改善傾向を示したと報告されています。
作用機序としては、免疫応答や炎症性サイトカインの放出に関与する細胞内経路「NF-κB(エヌエフ・カッパービー)経路」を抑制することで、炎症を和らげると考えられています。この働きにより、酒さに特徴的な赤みの軽減が期待できます。また、角質を柔らかくして毛穴詰まりを改善へ導く働き(角質溶解作用)もあります。さらに、ニキビや皮膚の炎症に関わる細菌であるアクネ菌(クチバクテリウム・アクネス)や、表皮ブドウ球菌に対しても作用することが知られています。
クリンダマイシン と過酸化ベンゾイルは、一般的にニキビ治療用クリームに配合される組み合わせですが、丘疹膿疱型の酒さに伴う炎症性病変の改善を目的として使用されることもあります。
クリンダマイシンは抗生物質であり、過酸化ベンゾイルは抗菌作用に加えて皮脂分泌を抑える働きを持つ成分です。
WILKINらの研究では、酒さ患者43名を対象に外用クリンダマイシンの有効性が検討されました。3週間の観察期間を経て、顔面の赤みや血管拡張、丘疹および膿疱が減少する傾向が認められたと報告されています。また、クリンダマイシンは多くの患者において概ね良好に忍容されました。
ドキシサイクリン は第二世代テトラサイクリン系抗生物質で、経口薬として50mgまたは100mgが一般的に用いられます。中等度~重度の炎症性ニキビや酒さに適応され、抗炎症作用により丘疹や膿疱の改善が期待されます。また、アクネ菌(Cutibacterium acnes)に対する抗菌活性も示します。
最近の二重盲検試験では、酒さ患者51名を対象に、20mgのドキシサイクリン投与群とプラセボ群を比較したところ、投与群で炎症および病変数の改善が有意に優れていたと報告されています。
レチノイド は、トレチノインのような外用薬や、イソトレチノインのような経口薬として使用されるビタミンA誘導体です。コメド(毛穴の詰まり)を改善する働きがあり、皮膚の炎症制御に寄与するとされています。
レチノイドには、多形核白血球の走化性・遊走を抑制する作用や、アラキドン酸代謝(脂質酸化経路)に関わる反応を抑える働きがあり、その結果として、赤みや炎症を伴う皮疹の軽減が期待されます。
ニキビと酒さいずれの治療にも外用レチノイドが使用されますが、経口イソトレチノインは酒さの場合、一般的に低用量(1日10~20mg)で投与されます。
これはニキビ治療の標準的な0.5~1mg/kgと比較すると、控えめな設定です。主に、重症例や再発を繰り返す酒さに対して検討されることが多いとされています。
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