アトピー性皮膚炎に悩む人が増えているのは、どのような環境要因が影響している？

アトピー性皮膚炎は遺伝的要因に強く関係していますが、発症や悪化には複数の環境要因が関与していることがわかっています。生活様式の変化によって、こうした環境要因が増えると、それに伴いアトピー性皮膚炎の有病率も上がる傾向にあります。代表的な要因には以下のようなものがあります：

• 清潔志向の強まり

  1989年に疫学者デイヴィッド・ストラチャン氏によって提唱された「衛生仮説」では、乳幼児期に細菌や感染症への曝露が少ないと、免疫システムの発達が不十分となり、アレルギーや自己免疫疾患、炎症性疾患（アトピー性皮膚炎など）のリスクが高まるとされています。この仮説は先進国での疫学調査により一定の証拠が示されていますが、発展途上国でもアトピー性皮膚炎の有病率が上昇していることから、衛生要因だけでは説明しきれないとされています。

• 都市化が進むライフスタイル

  国連によると、世界的に都市人口は増加の一途をたどっており、2030年以降は農村人口の減少が見込まれています。2000年には約40％だった都市居住者の割合は、2018年には55％に達しました。ある研究によれば、都市部で暮らす人々は、農村部に住む人々よりもアトピー性皮膚炎にかかりやすい傾向があるとされています。都市の大気汚染が、発症や悪化を促す主要因の一つと考えられています。

• 喫煙率の高さ

  喫煙は、アトピー性皮膚炎の発症リスクを高める要因の一つです。タバコに含まれる刺激物質や汚染物質が皮膚のバリアを通過しやすく、免疫反応を引き起こして炎症を悪化させます。禁煙啓発キャンペーンが進んでいるにもかかわらず、世界的に喫煙者数は減少しておらず、これもまたアトピー性皮膚炎の増加に関係していると見られます。

• ストレスの増加

  多くの研究で、 湿疹 とストレスの間には関係があることが示されています。いくつかのメカニズムが関与しており、その一つに、ストレスホルモンであるコルチゾールによって角質層の脂質合成が減少することが挙げられます。これにより、もともと脆弱なアトピー肌の皮膚バリアはさらに弱まってしまいます。

  現在、ストレスは世界的にますます支配的となっており、「常に満たされない」という考え方に基づいています。社会学者たちは、現代の人々は過去の世代よりも人生に多くを求めており、そのためにより野心的な目標を設定するようになっていると指摘しています。自己実現や個人的達成への欲求が高まる一方で、仕事と私生活のバランスの取れない時間管理や、過度な仕事への投資が、大きなストレスにつながることもあります。さらに、死別や別離、経済・政治・衛生・気候といった世界的な危機への不安なども、ストレスを引き起こす要因とされています。

• 気候変動

  ストレス要因としても挙げられる気候変動（平均気温の全般的な上昇）ですが、皮膚の状態にも直接影響を及ぼします。フランス環境省によると、地球の平均気温は19世紀末から約1℃上昇しています。アトピー性皮膚炎を持つ人は高温や湿度の変化に敏感で、特に気温上昇はかゆみや湿疹の引き金になることがあります。そのため、地球温暖化がアトピー性皮膚炎の増加に寄与している可能性も否定できません。