静脈瘤による湿疹、別名うっ滞性皮膚炎は、主に静脈不全によって引き起こされる皮膚疾患です。脚や足首に発症し、静脈瘤と関連しています。原因、症状、治療法など、静脈瘤による湿疹について知っておくべきすべてをご紹介します。

うっ滞性皮膚炎の原因
静脈瘤による湿疹は、下肢の静脈がその弾力性を失い、血液を効率的に心臓へ戻せなくなったときに現れます。正常な状態では、静脈内を流れる血液は脚から心臓へと上向きに流れます。重力に逆らうため、静脈には 弁があり、これが血液の逆流を防ぐ仕組みになっています。ところが、その弁が損傷すると、うまく機能しなくなり、血液が脚に停滞します。この現象は 静脈うっ滞と呼ばれます。もしくは、静脈瘤あるいは静脈の拡張とも呼ばれることもあります。これらは浮腫とうっ滞を特徴とします。血液の静脈壁への過度の圧力により、皮膚が引き伸ばされ炎症を起こし、静脈瘤による湿疹の始まりとなります。
なぜ、静脈不全を抱えていても、単に脚の重さを感じるだけの人もいれば、治療を行わないままうっ滞性皮膚炎を発症する人がいるのか、その理由は現在のところわかっていません。医師たちは、これには 遺伝的素因が関係していると推測しています。さらに、肥満、運動不足、長時間立ち続ける職業(美容師や薬剤師など)は悪化要因とされています。
静脈瘤による湿疹の症状とは?
静脈瘤による湿疹(うっ滞性皮膚炎)は、いくつかの段階を経て進行する皮膚疾患です。最初の段階では、脚の重さを感じることが特徴です。血液が静脈の壁に圧力をかけることにより静脈が拡張し、皮膚に細やかな血管が透けて見えるようになります。この段階で超音波検査を行えば、静脈瘤を発見することができます。脚の浮腫 や腫れは次第に悪化し、皮膚に炎症を引き起こします。かゆみ(掻痒感) が現れ始めると、これが静脈瘤による湿疹の始まりです。
掻きむしることで皮膚にかさぶたができ、 滲出性を伴う病変が現れます。その部位には感染が起きます。静脈瘤による湿疹がすぐに適切に対処されれば、完全な治療も可能です。しかし、治療を行わず放置すると、静脈瘤性潰瘍が発症します。これは自然に治癒せず、傷は慢性化してしまいます。
静脈瘤による湿疹を予防するには?
静脈瘤による湿疹(うっ滞性湿疹)の予防は、まず 静脈不全の予防から始まります。そのためには、定期的な運動を継続すること、長時間の飛行機旅行中や必要に応じて着圧ソックス・ストッキングを着用すること、夜間に脚を高くして寝ることで、血液の心臓への戻りを促進することが推奨されます。血液循環を促進するために最も勧められるスポーツは、水泳、ウォーキング、サイクリングです。
加えて、脚の重だるさを感じる方は、毎日 保湿剤 を脚に塗ることで、うっ滞性湿疹を予防できます。このケアによって皮膚のバリア機能が強化され、炎症を起こしにくくなります。また、このケアにマッサージを加えることで、血行促進効果が高まります。
静脈瘤による湿疹を和らげるには?
静脈瘤による湿疹の症状を和らげるために、いくつかの対処法があります。着圧ストッキングの着用や、夜間に脚を高く上げることに加え、冷湿布 の使用や、ティーツリー、真正ラベンダーなど特定の精油を用いることが、かゆみの軽減に推奨されます。皮膚科医によって処方される ステロイド外用薬 は、かゆみの発作を和らげ、赤みを軽減するのに役立ちます。これらはコルチゾンの抗炎症作用によるものです。
かゆみが治らない場合や、病変が悪化していると感じた場合には、必ず医者に相談してください。医師は、静脈瘤を除去するための手術を提案することがあります。ストリッピング、静脈摘出術(フレベクトミー)、硬化療法、レーザーによる血管内焼灼術、ラジオ波治療など、年齢や湿疹の重症度、患者さんの耐性に応じて、さまざまな外科的選択肢が検討されます。医師は、それぞれの選択肢の利点、リスク、予想される結果について説明し、患者さんのニーズや希望に応じて判断を下します。
注 :早めに医師に相談することで、必要となる手術やその影響を最小限に抑えることができます。そのため、脚の重だるさが続く場合は、放置せず、早めに予約を取ることをお勧めします。
出典
GOLDENBERG G. & al. Eczema. The Mount Sinai journal of medicine (2011).
SAURAT J. H., LACHAPELLE J. M., LIPSKER D., THOMAS L. et BORRADORI L. Dermatologie et infections sexuellement transmissibles. Elsevier Masson (2017).
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