湿疹(皮膚炎)は身体のさまざまな箇所に赤い斑点やかさぶた、鱗屑(りんせつ:皮膚のはがれ)などが現れる皮膚の炎症性疾患です。これは進行性の疾患であり、適切な対応がされない場合には悪化することがあります。ここでは、湿疹が引き起こす可能性のある危険性について詳しくご紹介します。

湿疹とは?
湿疹 は 皮膚の炎症性疾患 で、赤く乾燥し、ざらついた不規則な形の斑点が現れるのが特徴です。これらの病変はしばしば強いかゆみを伴います。その後、透明な液体を含む小さな水疱が形成されることがあり、これを搔いてしまうと水疱が破れ浸出液が出ることになります。フランスでは約250万人 が湿疹に悩まされており、皮膚科の受診理由としては全体の約30%を占める主要な湿疹の一つです。湿疹にはさまざまなタイプが存在しますが、中でも一般的なのはアトピー性皮膚炎と接触皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎は、遺伝的な素因によるものです。このタイプの湿疹を持つ人は皮膚のバリア機能が弱く、アレルゲンが侵入しやすい状態にあります。さらに、彼らの免疫系は外的刺激 に対して過剰に反応し、環境中の一般的なアレルゲン(動物の毛や花粉、ほこりなど)にさらされると過度な炎症反応を引き起こします。
接触皮膚炎は特定のアレルゲン物質に皮膚が接触することで発症します。 このタイプの湿疹の原因となる主なアレルゲンには、衣服、化粧品、外用薬、そして職場で使用される物質源(セメント、塗料、農薬、手袋など)があります。このように、接触性皮膚炎はアトピー性皮膚炎と症状は似ていますが、その原因とは異なり、遺伝とは関係がありません。
湿疹は危険なのか?
湿疹はほとんどの場合 良性であり、命に関わるような危険はありません。とはいえ、かゆみや精神的な負担は無視できず、患者の生活に大きく影響を与えることもあります。ただし、適切な治療を受け、皮膚科医の指示に従うことで、その影響を最小限に抑えることが可能です。それでも、まれに湿疹 が悪化して、より重篤な状態へと進行することがあります。
感染のリスク
病変を掻いてしまった結果として、湿疹 が感染を起こすことがあります。例えば、ヘルペスウイルス、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンスなどの真菌が、傷口に感染する可能性があります。感染を起こす微生物によっては、痛みが生じたり、かゆみや赤みがさらに悪化することがあります。感染が疑われる場合には必ず 皮膚科を受診し、原因を特定してもらい、それに応じた治療を受ける(真菌感染の場合は抗真菌薬、ウイルス感染の場合は抗ウイルス薬、細菌感染の場合は抗生物質)ことが不可欠です。
湿疹の全身化
湿疹において最も深刻な合併症のひとつは、病変が全身に広がる「紅皮症(こうひしょう)」と呼ばれる状態です。湿疹が全身化すると、時には体表面積の90%以上を覆うこともあります。通常の赤みやかゆみに加えて、浮腫(むくみ)も生じることがあります。このような状態は皮膚科の緊急事態とされ、場合によっては入院が必要です。
湿疹のリスクを防ぐためのアドバイス
湿疹による合併症は、日々のちょっとした工夫で防ぐことができます。以下のようなアドバイスが予防に役立ちます:
湿疹の病変部を掻かないようにすること
掻くことで皮膚の傷が開き、細菌やウイルスが侵入しやすくなります。睡眠中に無意識に掻くのを防ぐために、綿製の手袋を着用する人もいます。また、爪を短く整えておくことも、皮膚への思わぬ傷害を防ぐのに効果的です。加えて、温泉水や特定の精油、冷却によるケアは、かゆみを和らげる効果が期待できます。
定期的に保湿剤を塗布する
皮膚を保湿し、感染から守るためには、1日1回以上の保湿ケアが推奨されます。保湿剤は非常にリッチなテクスチャーを持ち、皮膚の表面に自然の皮脂膜に似た保護膜を作ることで、水分の蒸発やアレルゲン・病原体の侵入を防ぎます。特に入浴後は肌が乾燥しやすいため、入浴直後に保湿剤を使用するのが望ましいです。また、香料を含む保湿剤は敏感なアトピー肌には刺激となるため、避けるようにしましょう。
異変があればすぐに皮膚科医に相談を
病変の状態に変化が見られたり、湿疹が全身に広がる兆候があれば、ためらわずに医師に相談しましょう。湿疹が悪化しているかどうかを判断し、必要に応じて治療を処方してくれます。早期に対応することで、合併症のリスクを最小限に’抑えることができます。
出典
GOLDENBERG G. & al. Eczema. The Mount Sinai Journal of Medicine (2011).
BORRADORI L. & al. Dermatologie et infections sexuellement transmissibles. Elsevier Masson (2017).
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