酒さは慢性の皮膚疾患で、主な症状は赤み(紅斑)です。あるタイプの酒さでは、皮膚の表面にニキビに似た症状、すなわち皮膚表面に丘疹(ぶつぶつ)や膿疱(うみを持つできもの)が現れることがあり、これを「ニキビ様酒さ」と呼びます。レチノイドはニキビの治療に効果的な成分群として知られていますが、酒さの場合はどうでしょうか?このテーマについて詳しく見ていきましょう。

酒さ様ざ瘡(ニキビ様酒さ)とは何か?
酒さ は、再発と寛解を繰り返す慢性的な皮膚疾患です。初期症状としては顔の 赤み(紅斑)、 ほてり感 、そして血管の著しい拡張が見られ、特に肌色が明るい人では血管が目立ちやすくなります。場合によっては、酒さが進行すると皮膚病変が現れ、丘疹・膿疱などが皮膚表面に形成されることがあります。
このタイプの酒さの症状がニキビの症状とかなり類似しているため、ニキビ様酒さと呼ばれることもあります。このタイプの酒さの発症には、皮膚に存在するダニの一種であるデモデックスの過剰繁殖が関係しているとされています。この異常繁殖は、免疫の不調によって引き起こされる慢性的な浮腫(むくみ)により、寄生虫が過剰に繁殖しやすい環境が作られることに起因していると考えられています。丘疹膿疱性酒さ(ニキビ様酒さ)とニキビは症状が類似しているため、 ニキビ治療で推奨されるレチノイドが酒さにも有効なのか、疑問を抱く方も多いでしょう。
レチノイド:酒さにも効果的?
レチノイド とは、ビタミンAおよびその代謝物、そして天然または合成の誘導体を含む成分群 のことを指します。化粧品に使用が許可されているレチノイドには、レチノール、レチノイドエステル、レチナールなどがあります。一般的にはエイジングケアとして成熟肌向けに勧められることが多いレチノイドですが、ニキビのある肌にも非常に有効です。これらの成分には 角質溶解作用 (ケラトリティック効果)があり、表皮に蓄積した古い角質を除去し、毛穴を詰まりにくくする働きがあります。 これにより、新たなコメド(角栓、ニキビの元)を予防することができます。
近年、レチノイドの酒さへの効果、特に丘疹膿疱性酒さ(ニキビ様酒さ)に及ぼす影響についての研究が複数行われています。局所的に塗布されたレチノイドは、結合組織の再構築 を促進し、TLR2(Toll様受容体2)の発現を抑制 することが示されています。この受容体は、特に細菌の認識や炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6)の生成に関与しています。臨床試験では、レチノイドが 赤み(紅斑)、丘疹、膿疱、さらには毛細血管拡張(酒さにより拡張した小さな血管が現れる状態)を軽減することが報告されています。
注意 :化粧品に配合されたレチノイドは酒さの症状緩和に役立つ可能性がありますが、皮膚科医による処方治療に代わるものではないことを理解しておくことが重要です。
レチノイドと酒さ:使用時の注意点
レチノイドを皮膚に塗布すると、 乾燥、 光過敏、刺激などの副作用を引き起こすことがあります。そのため、レチノイドを使用した後は必ず保湿クリームを塗り、日中は日焼け止めで紫外線対策を行うことが推奨されます。さらに、目元の皮膚は非常に敏感であるため、レチノイドを目のまわりに塗布しないよう気をつけましょう。レチノイドは 少しずつスキンケアルーティンに取り入れるのが理想です。最初は2日に1回、あるいは3日に1回の使用頻度から始め、肌に異常がないようであれば、頻度を上げ、最終的には毎晩の使用に増やしていくとよいでしょう。
最後に、レチノイドはたとえ外用(塗布)であっても、妊娠中または妊娠を希望する女性には禁忌です。皮膚から体内に吸収される量は少ないとされていますが、レチノイドは催奇形性を持つ成分です。中枢神経系の異常や心臓の形成異常など、深刻な胎児への影響が報告されているため、妊娠中・授乳中の使用は避けましょう。
出典
HATA T. R. & al. Topical and systemic therapies in the treatment of rosacea. American Academy Dermatology (2014).
FELDMAN S. R. & al. Rosacea Management. Skin Appendage Disorders (2016).
ALI F. & al. Rosacea. British Journal of Hospital Medicine.(2021).
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