酒さは初期段階では良性の皮膚疾患ですが、慢性化すると日常生活に支障をきたすこともあります。主に顔に赤みや血管拡張を引き起こすのが特徴です。抗生物質治療や従来の局所療法に加え、酒さの症状を緩和するための自然療法もいくつか存在します。それらを一緒に見ていきましょう。

酒さ:実践できる自然療法とは
酒さのさまざまな形態に注目
酒さは皮膚の炎症を引き起こす慢性的な 皮膚疾患 です。その 原因 はまだ十分に解明されていませんが、最近の研究でいくつかの誘因が特定されています。その中には、熱、日光、寄生虫の繁殖、ストレス、特定の 食品 の摂取、遺伝的素因などが挙げられます。実際、酒さ患者の約30% がこの疾患の家族歴を持っていることが確認されています。酒さは、その進行度や治療状況に応じて、軽度から重度までさまざまな症状を引き起こします。一般的に、酒さは以下の4つタイプに分類されます。
血管拡張型酒さ(紅斑性酒さ) :この酒さタイプは最も一般的で、また最も軽度です。このタイプにかかる人はほてりを感じやすく、また紅斑と呼ばれる赤みが現れます。
丘疹・膿疱型酒さ :日常生活への支障が大きく、このタイプの酒さはより重度で、赤みだけでなく、赤い吹き出物(丘疹)や膿疱といった症状を特徴としています。丘疹・膿疱型酒さには、皮膚のつっぱり感や焼けるような痛み、不快感も伴います。
肥厚型酒さ :まれですが重度の酒さタイプで、鼻部皮膚の毛穴が広がり(鼻瘤)、皮膚が厚くなります。皮膚の肥厚は丘疹や膿疱を伴うこともあり、顔全体に広がる場合もあります。
眼型酒さ : まれに、酒さが目にも影響を与えることがあります。この場合、目は赤くなり、結膜炎や 慢性的な乾燥が起こりやすくなります。まぶたにも赤くなり、症状が現れることがあります。
酒さの最初の兆候が現れた時点で、皮膚科医に相談すること が重要です。適切な治療が処方されることで、酒さの悪化やより重篤な症状への進行を防ぐことができます。
自然療法にはどのようなものがある?
酒さは完全には治癒しませんが、皮膚の見た目を改善し、赤みや膿疱を軽減するためのさまざまな治療法 が存在します。治療法は治療は症状の重症度や酒さのタイプによって異なります。一般的な治療法としては、抗炎症ジェル、経口抗生物質、外科的処置(レーザー治療や皮膚剥離など)が挙げられます。これらの治療に加えて、 酒さがまだ軽度の段階であれば、赤みや毛細血管拡張の外見(目立ち)を軽減できる自然療法もあります。
カンゾウ(甘草)
甘草はフラボノイドやサポニン(グラブラジン、グリチルリジン酸、グリチルリジン、ライコカルコン、リクイリチゲニンなど)を豊富に含む植物として知られています。これらの成分には 抗炎症作用があります。研究によると、甘草はスーパーオキシドアニオンの生成や、酒さの病態に関与する酵素であるシクロオキシゲナーゼの活性を抑制できることが示されています。この酵素は体内でアラキドン酸をプロスタグランジンに酸化する過程を触媒します。
特に、2%の甘草を含むジェルがアトピー性皮膚炎に対してどのような効果を持つかを調べた研究があります。2週間にわたり毎日塗布した結果、紅斑、浮腫、かゆみのスコアが減少しました。酒さもまた敏感肌、紅斑、炎症を特徴とするため、甘草はこの皮膚疾患に対抗する有望な候補と考えられます。
カモミール
カモミールは、サポニン、フェニルプロペン酸、フラボノイドを独自に組み合わせて含有しています。この複雑な構成のおかげで、カモミールは 血管壁の透過性 および 毛細血管の機械的強度を著しく向上させます。これにより、酒さの主要な要因である血管の過度な拡張を抑えることができます。
カモミールの酒さへの効果を調べた研究のひとつに、二重盲検法による臨床試験があります。酒さ患者125人が、1%カモミール配合クリームを1日2回、12週間にわたり塗布し、別の121人はプラセボを使用しました。結果として、カモミールクリームを使用した患者は、紅斑の重症度および酒さの全体の重症度において、ベースラインおよびプラセボ群に比べて有意な改善を示しました。
アロエベラ
アロエベラは化粧品で広く利用されており、 皮膚に対する多くの有益な効果が知られています。その効能はさまざまな研究で立証されています。抗炎症作用、抗酸化作用、鎮痛作用、抗かゆみ作用などがあり、アロエベラは99%以上が水分で構成されているにもかかわらず、残りの固形分には酵素、多糖類、脂溶性ビタミン、ミネラル、フラボノイドといった活性成分が豊富に含まれています。
さらに、アロエベラにはアントラキノンが含まれており、これは酒さの治療に用いられる抗生物質であるテトラサイクリンに構造的に類似しています。加えて、複数の症例報告では、アロエベラジェルの塗布によって皮膚炎に伴うかゆみや灼熱感、さらには瘢痕が改善したという結果が報告されています。この天然成分は血管の拡張と血管壁の透過性を抑制し、炎症性皮膚疾患において重要な役割を果たします。以上のことから、アロエベラエキスは酒さに悩む皮膚を落ち着かせるための良い代替手段であると考えられます。
緑茶
チャノキの葉や芽には、カテキンと呼ばれる多くのポリフェノールが含まれており、抗酸化作用、抗炎症作用、光保護作用があります。 機構的には、これらの分子は一酸化窒素合成酵素(NOS)を阻害し、この酵素はフリーラジカルである一酸化窒素を生成します。さらに、カテキンは脂肪酸の酸化を触媒するリポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼの活性を抑制し、抗酸化および抗炎症効果を発揮します。
また、緑茶抽出物は血管内皮増殖因子や低酸素誘導因子(HIF-1)の発現を抑制することで、酒さの血管新生プロセスを阻止し、良い影響を与える という研究結果もあります。
ユズ
柑橘類はその栄養価の高さと健康効果で広く知られています。ユズの摂取は、特に韓国や日本といったアジア諸国で一般的です。この果物は抗酸化物質が非常に豊富 であり、皮膚に対して抗炎症作用があることが証明されています。実際、ユズに含まれるリモネンは、活性酸素種(ROS)の産生と、細胞の免疫応答やストレス応答に関与する転写因子であるNF-κBの活性を低下させます。
さらに、2018年に行われた研究では、ユズ抽出物が酒さの病態に関与するいくつかの炎症性メディエーター (LL-37やKLK5など)に対して抑制作用を持つことが明らかになりました。この研究では、ユズ抽出物が酒さ患者における自然免疫系の応答を正常化し、この皮膚疾患の症状改善に寄与する可能性があると結論づけられています。
コロイド状オートミール
コロイド状オートミールは、何世紀にもわたり、さまざまな皮膚疾患に伴うかゆみや刺激を和らげる鎮静剤として使用されてきました。科学界では、オートミールに含まれるアベナンスラミドが、その有益な効果、特に 抗炎症作用およびかゆみを抑える作用の主な要因であると考えられています。アベナンスラミドは、ケラチノサイトにおけるNF-κBの活性を低下させ、炎症性サイトカインの産生を抑制することで作用します。
複数の研究において、コロイド状オートミールがアトピー性皮膚炎に与える効果が調査されており、この天然成分が 皮膚を落ち着かせ、赤みを軽減するのに役立つことが示されています。酒さとアトピー性皮膚炎には、赤み、炎症、かゆみなど多くの共通点があることから、オートミールの効能は酒さによって影響を受けた肌にも応用できる可能性があると推測できます。
注記 :このリストは網羅的なものではありません。他にも自然由来の治療法が研究されており、酒さに対して効果があることが確認されています。たとえばウコン(Curcuma)、クワッシア・アマラ(Quassia amara)、ニガヨモギ(Artemisia absinthium)、ポテンティラ・エレクタ、セイヨウノコギリソウ(Achillea millefolium)などが挙げられます。
出典
BERSON D. & al. Botanicals and Anti-Inflammatories: Natural Ingredients for Rosacea. Seminars in cutaneous medicine and surgery (2011).
TAN J. & al. Rosacea: New Concepts in Classification and Treatment. American Journal of Clinical Dermatology (2021).
DANCIU C. & al. Recent Advances in the Management of Rosacea through Natural Compounds. Pharmaceuticals (2024).
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