酒さは世界中で約4億1,500万人が悩まされている皮膚疾患です。赤みや炎症を引き起こし、通常30歳以降に発症します。この疾患の原因は何でしょうか?どのように症状を和らげることができるのでしょうか?酒さについて知っておくべきことをご紹介します。

酒さは世界中で約4億1,500万人が悩まされている皮膚疾患です。赤みや炎症を引き起こし、通常30歳以降に発症します。この疾患の原因は何でしょうか?どのように症状を和らげることができるのでしょうか?酒さについて知っておくべきことをご紹介します。
酒さは慢性的な皮膚疾患で、主に顔、額、鼻、頬、あごに発症します。広範囲にわたる赤みが特徴で、顔の小さな血管が拡張し、表面に浮き出て目立ちやすくなります。その他にも、ほてり、皮膚の過敏、焼けるような感覚やピリピリした不快感などが見られます。
この皮膚疾患は時間の経過とともに進行し、周期的に発症する傾向があります。 つまり、数週間から数ヶ月症状が現れた後、消失し、再び強い症状として再発することがあります。酒さの初期には赤みだけであっても、時間の経過とともに、膿を伴う赤いぶつぶつ(丘疹)や皮膚の著しい肥厚、さらには眼への影響といった重度の症状を引き起こす場合もあります。
酒さ(赤ら顔)には さまざまな症状があり、重症度も異なります。酒さの初期症状は軽度でも、進行するとより深刻な状態になることがあります。酒さには4つのタイプが知られています。
最も一般的な酒さのタイプです。主な症状は、ほてり、一時的または持続的な赤み、皮膚の過敏、そして皮膚の下の血管拡張がみられ、それが目に見えるようになります。
赤いぶつぶつ(丘疹)や膿疱が生じることからニキビと混同されることがあります。このタイプの酒さは顔の赤みを強め、皮膚のつっぱり感、焼けるような感覚や不快感が伴います。
稀なタイプで、皮膚の肥厚と毛穴の拡大(特に鼻に現れる「鼻瘤(りゅう)」)が特徴です。これは見た目に大きな影響を与える重大な合併症の一つです。肥厚にはしばしば丘疹や膿疱が伴うこともあり、顔全体に広がる場合もあります。
酒さは目にも影響を与えることがあります。まぶたの赤み、結膜炎、ドライアイが見られ、多くの場合、目に砂が入っているような異物感が続きます。
初期症状が現れた段階で、直ちに皮膚科を受診することが重要です。軽度の酒さであっても合併症を引き起こすことがあり、特に目に影響を及ぼす可能性もあります。
酒さの原因 は未だ明らかではありません。しかし、複数の生物学的メカニズムが、赤みやほてりの発生に関与していると考えられています。最近の研究によれば、血管の拡張を促進する要因が酒さの中心的な要素であることがわかってきました。毛細血管の直径が拡大することで表皮温度が上昇し、赤みやほてりが生じるのです。酒さの悪化に関与するとされる主な要因について、一緒に見ていきましょう。
遺伝的要因:酒さ患者の約30%がこの疾患の家族歴を有すると推定されており、未特定の遺伝子が関与していると考えられています。一部の研究では、酒さ患者に特有の炎症メカニズムに関与する受容体の存在が示唆されています。
寄生虫のコロニー形成 :皮脂腺のある部位に常在するデモデックスという寄生虫が、プロテアーゼを分泌し、PAR-2受容体(プロテアーゼ活性化受容体)を活性化します。これにより、TNF-αやIL-1といった炎症物が放出され、赤みや炎症が引き起こされます。
熱 : 熱は酒さに伴う炎症やほてりを悪化させます。実際、表皮に存在するTRPV1受容体(温度・痛覚に関与する受容体)は、 熱刺激によって活性化されます。
ストレス : ストレスは TRPA1やTRPV1受容体に作用すると考えられています。これらが刺激されると、PACAPやCGRPといった神経ペプチが放出され、血管を拡張させるため酒さにみられる赤みや紅斑を引き起こすのです。
太陽光のUVB : 地球上に届く紫外線の約5%を占めるUVBは、表皮のTRVP4受容体と相互作用し、皮膚組織の損傷を引き起こす可能性があります。これにより痛覚の活性化や皮膚構造の破壊が生じます。
特定の食品 : 唐辛子やコショウに含まれるカプサイシンもTRVP1受容体を刺激し、血管拡張を引き起こします。これが赤みやほてりの原因となります。
酒さの 医療的治療 は主に症状を軽減し、再発の間隔を延ばすことを目的としています。完全に治癒させることは現段階ではできませんが、酒さのタイプに応じて異なった治療法が用いられます。
血管性酒さの緩和 :赤みはレーザー治療を使用することで症状を緩和できます。またブリモニジン 配合のジェルが血管収縮作用により処方されることがあります。
丘疹膿疱性酒さの緩和 : 一般的にジェル、クリーム、ローションなどの外用薬が処方されます。多くの場合、その成分は メトロニダゾールという抗寄生虫作用を有する抗生物質です。アゼライン酸を配合したスキンケア製品の使用も推奨されます。
肥厚性酒さの緩和 : このタイプは外科手術によってのみ、正常な顔の形状を回復させることが可能です。
眼性酒さ の緩和:抗生物質軟膏でのまぶたマッサージが推奨されます。また、経口抗生物質の投与や、人工涙液の使用により眼の乾燥(ドライアイ)を防ぎます。
酒さを患っている場合、酒さの症状悪化を防ぐために、いくつかの追加的な予防策を講じることができます。まず最初に取るべき行動は、毎朝SPF50以上の日焼け止めを塗ることです。
実際、前述のとおり、太陽のUVB(紫外線B波)は酒さを悪化させる可能性があります。そのため、日光に当たることを避けるのが望ましく、外出する場合は帽子を着用することが推奨されます。もう一つのポイントは、肌を毎日保湿することです。特にヒアルロン酸を主成分とするクリームを塗ることで、肌に栄養・うるおいを与えると同時に、外的刺激や活性酸素(フリーラジカル)から肌を守ることができます。
最後に、酒さに悩む場合は、食生活を見直す ことも賢明です。いくつかの研究では、唐辛子やコショウなど辛い食べ物は表皮に存在する特定受容体と相互作用し、炎症反応を誘発することが明らかになっています。また、 アルコール飲料、 辛い食品、ヒスタミンを多く含む食品 (トマト、柑橘類など)、シンナムアルデヒド (シナモン)を含む食品は、酒さの場合には摂取を避けるべきです。これらの食品は、血管拡張作用を持ち、ほてりや赤みを引き起こす傾向があります。
その一方で、 カフェイン の摂取は血管収縮作用があることから摂取を推奨されています。また、ビタミンB2(緑葉野菜、米など)や亜鉛(魚介類、内臓肉など)を豊富に含む食品も好ましく、優先的に摂取するとよいでしょう。これらは抗炎症メカニズムに関与する特定のシグナル伝達経路を刺激するとされています。
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