酒さの原因とは？

酒さ の原因は依然として正確には解明されていませんが、複数の生体学的メカニズムが、患者に見られる炎症やほてりを引き起こしていると考えられています。最近の研究により、血管の拡張を促進する要因が酒さにおける重要な要素であることが明らかとなりました。毛細血管の直径が拡大することで表皮温度が上昇し、 赤みやほてりといった炎症が発生します。それでは、酒さの発作を助長する要因を見ていきましょう。

原因その1：遺伝

酒さ患者のうち、最大30％が家族に同じ疾患を持つ人がいるとされ、まだ特定されていない遺伝子が関与しており、場合によっては遺伝性の疾患である可能性が考えられています。ある仮説では、酒さ患者には炎症メカニズムに関与する特定の受容体が多く存在するという点が挙げられています。

さらに、肌の色が明るい（光線過敏性が高い）人は、この皮膚疾患を発症するリスクが高いようです。統計によると、酒さは女性の方が男性の約2倍も多く発症しており、ただしこの理由についてはまだ解明されていません。

原因その2：寄生虫のコロニー形成

デモデックスは、主に皮膚の毛包・皮脂腺領域に生息する寄生ダニの一種で、 酒さ（赤ら顔）の発作を助長する可能性があります。これらは通常表皮に存在し、皮脂分泌を調節する役割を担っています。 しかし皮膚1 cm²あたり5匹以上のデモデックスが確認された場合には、「寄生（コロニー形成）とみなされます。

これらはタンパク質分解酵素であるプロテアーゼを分泌し、皮膚内に存在するPAR-2（プロテアーゼ活性化受容体）の働きを刺激します。この受容体は、炎症反応や痛覚反応に関与する重要な役割を果たしています。PAR-2の活性化によって、 TNF-αやIL-1といった炎症性物質が放出され、 これが酒さ患者にみられる赤みや炎症の原因となります。

原因その3：熱

熱は酒さで観察される炎症反応の発現を促進する要因であると考えられています。また、病状に伴う刺激感やほてりも悪化させる可能性があります。これは、表皮に存在するTRVP1受容体が関係しています。TRVP1は 痛覚刺激に関与しており、熱刺激に反応して活性化します。

原因その4：ストレス

強いストレス も、酒さを悪化させる要因になり得ます。ストレスはTRPA1およびTRPV1という受容体に作用します。これらの受容体は感覚神経ニューロン上に存在し、刺激されると、PACAPやCGRPなどの神経ペプチドを放出します。これらのペプチドは血管に作用し、血管の拡張を引き起こし、酒さにみられる赤みや持続性紅斑の原因となります。また、ストレス時に分泌されるホルモン、コルチゾールが、これらの受容体と直接的または間接的に相互作用している可能性が指摘されています。ただし、コルチゾールが具体的にどのようなメカニズムで作用しているのかについては、未だ解明されていません。

原因その5：紫外線UVB

地球に届く紫外線のうち、UVB波は約5%を占めています。このUVBは非常に高いエネルギーを持ち、皮膚の表皮にまで到達し、日焼けやアレルギー反応、さらには皮膚がんを引き起こす可能性があります。また、UVB波は皮膚内のTRPV4受容体と相互作用することが知られており、日光による皮膚組織の損傷 にも関与しています。これらの受容が刺激されることで、痛覚関連メカニズムが誘発され、皮膚構造の劣化を引き起こします。

原因その6：特定の食品

熱と同様に、 カプサイシンもまた酒さを悪化させる要因です。主に唐辛子、ピーマン、コショウなどに含まれる化合物で、TRVP1受容体の活性化を引き起こします。この受容体が刺激されることで、血管が拡張し、赤みやほてり、刺激感が引き起こされます。これは酒さを患う人々が感じる不快感や炎症の一因となっています。