アトピーは多くの人が悩まされる皮膚疾患で、実際にはニキビに次いで2番目に多い皮膚疾患です。中でも最も一般的なのが「アトピー性皮膚炎」です。皮膚にさまざまな症状を引き起こすため、アトピー性皮膚炎は患者の精神面にも大きな影響を及ぼすことがあります。ここでは、この皮膚疾患の症状に焦点を当てて説明します。

アトピー:どんな症状がある?
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は慢性的な炎症性疾患で、再発を繰り返す特徴があります。誰でもかかる可能性がありますが、特に乳児や子どもによく見られ、子どもの約10人に1人が発症しています。
この病気には遺伝的な素因があり、患者の半数以上に同じ症状を持つ家族がいます。研究では、皮膚の角質層を構成する「フィラグリン」やその他の必要な分子に関わる遺伝子異常が発見されています。
アトピーの原因は、皮脂や脂質、細胞同士をつなぐ分子の産生が不足し、皮膚のバリア機能がうまく働かなくなることです。
豆知識:「アトピー」とは、本来問題を起こさないような環境中の物質(動物の毛、ホコリ、花粉など)に対してアレルギー反応を起こしやすい体質のことを指します。
湿疹には接触性皮膚炎や貨幣状湿疹(円形湿疹)などいくつかのタイプがありますが、主な原因はバリア機能がうまく働かなくなったアトピー性皮膚炎です。このバリアが壊れることで、皮膚から水分が失われ、外部の刺激物やアレルゲンが侵入し、様々な症状や合併症を引き起こします。
アトピー性皮膚炎の主な症状
アトピー性皮膚炎は、再発・悪化と寛解(落ち着いた状態)を繰り返します。アトピー肌の人は、以下のようなさまざまな症状に悩まされます。
湿疹による皮膚の病変
赤く炎症を起こした湿疹による皮膚の病変は、発症時に現れます。主に顔や首、体の関節の内側(ひじやひざの裏)にできやすいです。湿疹の皮膚病変は、以下の4つの段階を経て変化します。
紅斑(こうはん)期(赤みのある状態)
炎症によって皮膚が赤くなり熱を持ちます。病変は広がることもあり、境界は不明瞭です。皮膚が厚くなり、強いかゆみ(掻痒感)を伴います。
小水疱期(しょうすいほうき)
数時間後、病変部に透明な液体の入った小さな水ぶくれ(小水疱)ができ、かゆみが続きます。
滲出期(しんしゅつき)
湿疹は非常にかゆいため、掻くことで水ぶくれが破れます。この段階では、自発的または掻いたことによって水分がにじみ出ます。
痂皮期または落屑期(かさぶた・皮むけの状態)
治癒に向かう段階で、かさぶたができたり皮がむけたりします。完治する場合もあれば、痕が残ることもあります。
また、かゆみによる過度な掻きむしりによって皮膚が厚くなる苔癬化や、「結節性痒疹」と呼ばれる慢性的な皮膚変化が見られることもあります。さらに、掻いた傷口から黄色ブドウ球菌に感染して「とびひ(伝染性膿痂疹)」になることもあります。
強いかゆみ
湿疹の皮膚病変は、非常に強いかゆみを伴います。このかゆみは、睡眠障害やイライラの原因になります。
非常に乾燥した皮膚
アトピー性皮膚は、発症していない時期でも常に乾燥しています。この異常な乾燥は「皮膚乾燥症」と呼ばれます。バリア機能が低下しているため、水分が簡単に蒸発してしまい、肌が乾燥しやすく、不快感の原因になります。長時間の水との接触や合わないスキンケア製品の使用は、乾燥をさらに悪化させます。保湿剤は肌の潤いを保ち、症状を和らげるのに非常に重要な役割を果たします。
補足:接触性皮膚炎について
接触性皮膚炎は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)との接触によって起こる後天的な皮膚炎です。湿疹の皮膚病変自体はアトピー性皮膚炎と似ていますが、原因となる物質を取り除けば、症状が自然に改善される点が異なります。また、接触性皮膚炎では皮膚のバリア機能は正常なため、乾燥肌は通常見られません。
参考文献
Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale (INSERM) - Dermatite atopique. https://www.inserm.fr/dossier/dermatite-atopique-eczema-atopique/
ORCHARD D. & al. Eczema management in school-aged children. Australian Family Physician (2017).
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