ニキビや湿疹と混同されることもある酒さは、頬、額、鼻、あごに激しい赤みを引き起こす皮膚疾患です。その正確な原因はまだ十分に解明されていませんが、科学者たちは、食生活をはじめとする特定の生活習慣がその症状の緩和に役立つことを認めています。今回は、酒さに悩む方が積極的に取り入れるとよい食品をご紹介します。

酒さを患っている場合、特別な食生活をするべき?
酒さの主な特徴
酒さに特有の症状は、顔面に広がる 拡散性の赤みです。額、鼻、頬、あごなどの顔面中心部に集中して現れます。これは血管の拡張が原因であり、特に色白の肌では血管が目に見えるほどになることがあります。また、酒さには目に見えない多くの症状も伴います。例えば皮膚の高い敏感性や、焼けるような感覚、患部周辺のチクチクとした刺激などです。
この皮膚疾患は時間の経過とともに進行し、周期的に現れます。つまり、症状が数週間あるいは数か月間現れた後に一旦収まり、その後さらに強く再発することもあります。酒さは初期の赤みにを加えて、時間の経過とともに膿を含んだ赤い吹き出物、著しい皮膚の肥厚、さらには眼への影響といったより重篤な症状が現れる可能性があります。
酒さには4つのタイプが特定されています。
血管性酒さ
これは最も一般的なタイプで、主にほてりや一時的または恒常的な赤み(紅斑)、極度の皮膚の敏感性、皮膚下の血管拡張による血管の目立ちが生じます。
丘疹膿疱性酒さ
ニキビと誤解されやすいタイプで、赤みのほかに 赤い吹き出物や 膿疱の出現、皮膚のつっぱり感や灼熱感などの不快感を伴います。
肥厚性酒さ
稀なタイプで、皮膚の肥厚や鼻部皮膚における毛穴の拡張(「鼻瘤(りんりゅう)」と呼ばれる)を特徴とします。皮膚の肥厚はときに丘疹や膿疱を伴い、顔全体にまで広がることがあります。美容的ダメージが大きく、酒さの重篤な合併症の一つです。
酒さはときに眼に影響を及ぼすことがあります。この場合、患者はまぶたの赤み、結膜炎、眼の乾燥、といった症状が見られます。しばしば、砂が入っているような異物感を訴える患者もいます。
初期症状が現れたらすぐに皮膚科医に相談することが重要です。軽度の酒さでも、迅速に適切な対処をしなければ眼の障害など深刻な合併症を引き起こす恐れがあります。
酒さの場合に摂取が推奨される食品は?
一部の 食品 が炎症反応を引き起こし酒さを悪化させる一方で、症状の緩和に寄与する食品も存在します。ここでは、酒さの発作を和らげるのに役立つ可能性がある食品をご紹介します。
カフェイン
カフェインは長い間、酒さの症状を悪化させる食品であると考えられてきました。しかし、最近の研究により、症状悪化の原因となっていたのは、飲み物自体ではなく「熱さ」であることがわかってきました。実際、熱い飲み物は血管拡張させ、赤みや顔のほてりの発生を引き起こします。
一方で、カフェインそのものは酒さの発症リスクを低減する可能性があるとされています。ある研究では、1日に400mg以上のカフェイン、すなわちコーヒー約4杯分を摂取した人は、酒さの発症が抑えられることが示されました。この効果は、カフェインが持つ血管収縮作用により、赤みなどの症状を軽減するためだと考えられています。ただし、紅茶や炭酸飲料など他のカフェイン含有飲料と酒さとの関連性は確認されていません。
ビタミンB2を含む食品(ナッツ、緑黄色野菜、米など)
1947年に、ビタミンB2欠乏が酒さ症状の悪化に関係するという仮説が初めて提唱されました。その後の研究では、ビタミンB2を含むクリームを肌に塗布することで酒さ患者の皮膚状態が改善されたという報告もあります。
この作用のメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、ビタミンB2が炎症細胞の粘着性を抑制し、炎症を抑える可能性があると考えられています。
しかし、ビタミンB2の経口摂取による効果については、これまでに研究が行われていません。したがって、ナッツ、緑黄色野菜、米などビタミンB2を豊富に含む食品が、酒さに有効であるかどうかは現時点では推測にとどまります。
亜鉛が豊富に含まれる食品(魚介類、内臓肉、肉類など)
亜鉛の摂取と酒さの症状との関係を明らかにするため、これまでに数々の研究が行われてきましたが、結果は一貫していません。例えば、ある研究では、約45人の被験者が1日2回、220 mgの亜鉛を3か月間経口投与しても、酒さの改善効果がなかったとしています。
一方で、別の研究では酒さ患者25名を対象とし、6か月間の研究が行われました。体内吸収率の高いピコリン酸亜鉛を1日3回、100mgずつ経口投与したところ、酒さの重症度スコアが改善したと報告されています。これにより、亜鉛が酒さ症状のある皮膚に対して、ある程度有益な効果をもたらす可能性が示唆されました。
亜鉛の作用メカニズムについては、いくつかの仮説が提唱されています。亜鉛はNF-κBというタンパク質と相互作用し、その働きを妨げると考えられています。このNF-κBは、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-1βの合成を活性化する能力を持っています。このメカニズムを通じて、亜鉛には 抗炎症作用があるとされています。
乳製品
酒さを患う人々にとって、乳製品の摂取は非常に議論の多いテーマです。科学的研究の中には、乳製品が酒さの発作を促進すると示すものもあれば、逆に乳製品が酒さの症状緩和に寄与する可能性を示すものもあります。こうした特性の背後にあるメカニズムは、依然として明らかではありません。一部の研究では、共役リノール酸などの乳脂肪酸が、炎症性サイトカインの生成を調節する可能性があり、それによって抗炎症作用を発揮する可能性が示唆されています。
酒さの患者は、同じ食べ物に対して必ずしも同じ反応を示すわけではありません。何が自分にとって良いのか、また悪いのかを見極める最良の方法は、食事内容を詳細に記録し、それに加えて酒さの発作頻度や悪化の強度も記録することです。
出典
STEINHOFF M. & al. Recent advances in understanding and managing rosacea. F1000 Research (2018).
ALI F. & al. Rosacea. British Journal of Hospital Medicine (2021).
AL-NIAIMI F. & al. Rosacea and diet: what is new in 2021? Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology (2021).
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